ジーンズが地球を壊している?

環境と人間へのダメージが最も大きいのはジーンズかもしれない、と言われていることをご存じでしょうか。

ファッションアイテムの中でも、デイリーシーンに欠かせないジーンズですが、残念ながら環境負荷が高いことで知られています。主にデニム生地が使われているため、ジーンズのことを「デニムパンツ」や「デニム」と呼ぶこともありますが、一般的なジーンズ1本を生産するのに使われる水の量は、最大で約10,000リットルとも言われています。農薬や合成染料などを含んだ使用後の水は、飲み水を汚染し、野生動物にも害を与えることも。
また、私たちのジーンズが北極を汚染しているかもしれないという研究結果も出ています。

2017年に全世界2億社の企業データベースを収録する「ORBIS」が発表したグローバルレポートによると、ジーンズの市場規模は約556億ドル(約6兆円)。2028年末には、約620億ドル(約6兆8千億円)に達すると見込まれています。

多くの人が日々着用しているジーンズ。これからも愛用し続けたいなら、ジーンズを取り巻く現状に目を瞑ることはできません。事実を受け止めてどう改善していけるのかを考えるきっかけとなるよう、かみ砕いてお伝えしたいと思います。

数字が語る環境破壊の現状

2018年3月に開催された「ファッションと持続可能な開発目標:国連の役割とは」と題した国際会議で、国連は次のような声明を出しています。
「1kg、つまりジーンズ1本分の綿を生産するには10,000リットル以上の水が必要となる。つまりこれは、1人分の飲み水10年分を消費することを意味する。綿花栽培は全世界で使用される殺虫剤の4分の1、農薬の11%を占める。85%の繊維は最終的に焼却されるか埋立てられる。ポリエステルやナイロンなどプラスチック製の布地を洗うと、50万メトリックトンのプラスチックのマイクロファイバーがそのまま海に流される」
との警告をファッション産業に向けて発表しました。
出典:WWD 「ジーンズ1本の綿花栽培で飲み水10年分失う」 国連がファッション業界に警告

以下は、「1本のジーンズ」でよく引用される数字です。深刻さがお分かりになるのではないでしょうか。


1万リットル ジーンズ1本分の綿を生産するのに必要な水の量
10年分    ジーンズ1本分の綿を生産するのに必要な水の量を1人分の飲み水の消費量に換算
50億本    ジーンズの年間製造数
5万6000本  ジーンズ1本の洗濯で放出されるマイクロファイバーの平均本数 
20キロ   1本のジーンズの製造過程で排出される二酸化炭素の量


人類学者によれば、今この瞬間、世界中の人間の半数がジーンズをはいているそうです。下着や靴下などべーシックなものを除けば、ジーンズは最も普及している衣料品と言えます。それだけ世界中の人を魅了している訳ですが、ここまでくると、企業のみならず消費者である私たちも真剣にジーンズの問題に向き合わなければいけないところまで来ているのです。

ジーンズが引き起こす環境負荷とは

ジーンズは具体的にどのように環境に負荷をあたえているのでしょうか。大きくは以下の4つになります。

1.原料(コットン)生産における環境汚染
  ジーンズの主要原料はコットンです。そして、コットンは製造時に深刻な環境汚染を引き起こしています。
・水資源の搾取:通常のコットンは灌漑で生産されています。灌漑は非常に多くの水を必要とするため、現地の人々の生活に直結する井戸水が枯れてしまったり、「アラル海の悲劇」のように、巨大な湖が消えてしまうような事態も起きています。詳しくは「オーガニックコットンを選択する理由」を参照してください。
・農薬による環境汚染と生態系への影響
綿花の耕作地は世界の耕作地のうちわずか2.5%です。それに対して世界の殺虫剤の約16%、農薬全体の7%が綿花の畑に対して使われています。

2.染料による河川の汚染
繊維業界への監視が甘い地域では、染色と洗浄に使用される有毒化学物質(カドミウム、クロム、水銀、鉛、銅などの重金属)が川に直接排出され、回復不可能なレベルにまで環境破壊が進んでいます。

3.マイクロファイバー汚染
ジーンズの綿のような有機繊維は化学繊維ほど長く自然環境に残留せず、時間が経てば分解すると科学者や環境保護活動家は想定していましたが、現実はその想定を覆すものであることが分かってきました。
ジーンズを1本洗濯すると、なんと平均5万6000本もの繊維が放出されます。これは、フリースジャケットを洗濯したときに放出される繊維の約10倍に相当するそうです。下水処理場のフィルターに引っかかることなく通過するため、水路に流れ込んで海洋生物を危険にさらす可能性があります。そして、トロント大学の研究によると、デニムのマイクロファイバーが全ての繊維の中で最も多く堆積していることが分かっています。しかも、デニム繊維は遠く北極でも見つかっています。

4.二酸化炭素の排出による空気汚染
服飾業界全体の二酸化炭素排出量は、製造段階が最も多く、次に多いのが洗濯時です。ある調査によるとおよそ37%が洗濯の時に排出されていると分かりました。お湯を使った洗濯や乾燥機を使うと、よりCO2量を増加させることになります。

これからのジーンズとの付き合い方

ジーンズを取り巻く様々な問題に対して、世界で様々な企業が問題定義と課題解決に取り組んでいます。環境に配慮したジーンズの開発も進んでいます。
「ジーンズ=環境に悪い」という現状と認識を変え、地球に負荷を掛けない製品が市場に出てきています。私たち消費者は、そうした製品を購入することで負荷を減らしていくことができます。

また、洗濯を見直すということも必要です。
洗濯するときに二酸化炭素の排出量を減らすには、持ち主がその間、どうジーンズを扱うかにかかっています。
ここでは水を節約する方法をご紹介します。
• ジーンズを洗う頻度を減らす。ジーンズを洗濯機に入れて洗うまでの時間を延ばせば、色落ちや生地が傷むのを抑え、たくさんの水を節約できます。
• 洗濯するときは、常に冷たい水を使用して、エネルギーを節約します。
• 次回の洗濯までは日光に当てて紫外線による除菌をします。

いかがでしたか。
次にジーンズを買うときは何を選ぶのがベストなのか、買った後にどう扱うのかを考えてみてくださいね。