飲料業界で、ペットボトル商品のラベルレス化が加速しています。
2020年頃から各社が力を入れ始め、一気にラインナップが広がりを見せています。
人気の秘密
昨今のSDG’s(持続可能な社会の発展目標)に対する意識の高まりもあって、このラベルレスという方向性は消費者から高い支持を得ています。環境にやさしく、ごみを捨てる際の煩わしさから解放される画期的な取り組みは、コロナ禍の巣ごもり需要も手伝って支持層を急速に広げているようです。
消費者のメリットとデメリット
メリットとしては、以下が大きい点です。
・ラベルをはがす手間がなくなる
・プラスチックのごみ削減になる
デメリットとしては、以下が挙げられます。
・ラベル無いと美味しくなさそうに見える
・中身が分からず、移し替えているようで貧乏臭く感じる
・ケース販売が主流
ただし、20201年4月頃より自動販売機で単体売りが始まっているようなので、今後の動きに注目ですね。
また、各社ともにラベルレス商品のペットボトルデザインを見直しています。
い・ろ・は・す天然水 ラベルレスは、デザイン性の高いオリジナルのペットボトルを開発しました。
「今回のボトルは横からの強度が弱く、自販機での販売はできないが、飲み終わった後は簡単に潰すことができる。い・ろ・は・すブランドの潰しやすさは継承している」(日本コカ・コーラマーケティング本部ウォーターグループ 富重グループマネジャー)
企業側のメリット
一方で、企業側にも大きなメリットがあります。
・ラベルレスによるコスト削減
・ケース販売による売り上げUP
・環境に配慮することによる企業イメージの向上
アサヒ飲料は、2020年のラベルレスボトル製品の販売数量が、コロナ禍における家庭内需要の高まりもあって、前年より2.1倍の223万箱まで拡大したと発表しています。そして、2021年は、300万箱(前年比134%)を目指すとしています。これにより、ラベルのプラスチック樹脂の使用量は年間約70tの削減、CO2排出量は年間で約230tの削減を見込んでいるそうです。
また、同社の米女太一社長は、2021年1月に行われた方針説明会で、ラベルレス飲料について次のように話しています。
「プラスチック樹脂の使用量自体を減らしていく取り組みの一つとして、当社が業界に先駆けて発売したラベルレスボトルは、2018年の発売以降、お客様の強い支持を得ることで着実に成長した。コロナ禍における巣ごもり生活においても、改めて環境にやさしく、手間が省けるという点から評価されている」。
コカ・コーラシステムが20年4月からECを中心に販売している「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」も売れています。20年4~8月の「い・ろ・は・す」ブランドの小型容器のECチャネルにおける出荷量は前年同月比で約8割増。い・ろ・は・す 天然水 ラベルレスが新規ユーザーの獲得につながっているそようです。
日本コカ・コーラマーケティング本部ウォーターグループの富重豪グループマネジャーによると、「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレスの購入者の8割は、既存のい・ろ・は・すを購入したことがなかった」というのですから、ラベルレスがいかに消費者の購買意欲につながっているかが伺えますね。
ラベルレス商品を買って、環境負荷を軽減しよう
世界的な問題となっている、プラスチックごみ。
世界中の海でプラスチックごみやマイクロプラスチック(5ミリ以下の破片)が発見されています。
海洋に流れ出したプラスチックは簡単には分解しません。年間 480~1,270 万トンのプラスチックが世界の河川等から海洋に流入し、2050 年には海洋中のプラスチックが魚の量を上回ると言われています。
2018 年の日本の廃プラスチック排出量 は891 万トン(東京都環境局「プラスチック削減プログラム」より)
2019年に日本で消費された清涼飲料用ペットボトルの本数は227億本(PETボトルリサイクル推進協議会)
ラベルレス商品という選択が増えたことは素晴らしいことですよね。
ペットボトルのラベルに使用されているプラスチック樹脂が削減されると、ごみやCO2排出量の削減にどの程度のインパクトを与えるのかが気になりますが、大切なのは、消費者である私たち一人ひとりが「買う責任」「使う責任」を意識した行動を取ること。企業も個人も一緒にアクションを起こせば、大きなインパクトとなるはずです。